これは2枚目の写真のウレタン整形後
テニスは道具依存性とプレイ技術依存性の極めて高いスポーツです。
フレーム, ガット張り, チューンナップ, 打ち方が揃ってテニスは成り立ちます。
テニストピアは創業以来、こんな気持ちでやってきました。
「テニス専門店なら、その全てを最上級に追求して提供しよう」
しかし、サービス提供比率で言えばジュニア育成は極少です。
なのにBlogには、選手育成記事が多く登場します。
バランスが悪いですよね。
そして、ほとんど登場しない記事にウレタン再成型があります。
こんな気持ちがあったからかも知れません。
「発注が時々入るだけで良い」
「注文が殺到したら困る」
最近問い合わせが多く寄せられます。
これを書いても理解してもらえる代物ではないですが
その一助になればと書き記します。
はっきり言ってウレタン成型は大変です。
3スペックとの戦いは難敵です。
下準備との戦いは難敵です。
3スペックとは
1.重量
2.静的バランス
3.動的バランス(スウィングウェイト)
作業工程は
1.レザー付きの3スペック測定。
2.レザー除去と、3スペック測定。
3.エンドキャップ除去と、3スペック測定。
4.ウレタンはつりと、3スペック測定。
5.ロング化の場合アルミ延長材の組み込みと、3スペック測定。
重量,バランス調整の場合、ウェイト加重, 軽減, 移動と、3スペック測定。
6.ウレタン成型のためのセンター出しパーツの自作
7.ウレタン成型と、3スペック測定。
8.エンドキャップ取付と、3スペック測定。
9.レザー巻上げと、3スペック測定。
お客様に手渡すデータは、3スペックのビフォー,アフターだけです。
なのに、なぜ8段階24項目も測定するのか。
第一理由は、1.〜4.で、理想的9.実現のシナリオを描くためです。
理想的9.とは、目標値に対して、1g差,1mm差,1kg・m^2差以内です。
7.〜9.で、必要に応じて微調整を加えます。
場合によってはウレタンを部分切削を要します。
第二理由は、数値の意味を徹底的に頭に叩き込むためです。
本校ジュニアにおいて、それらの数値が、どんな打球感, どんな好ショット, どんなミスショットを生むかを検証し、数値の持つ意味を深めます。
第三理由は、データを繰り合わせて精査するためです。
様々なチューンナップの要望への対応に、過去のデータを活用します。
二回目のチューンナップに備えます。
7.の下準備は最難関です。
シャフト形状に合わせて、各サイズ3種の金型から選定します。
更にゴムパッキンとフレーム間の隙間の調整をします。
場合によりゴムパッキンをシャフト形状に合わせて作ります。
これに失敗するとウレタンが漏れてスカスカになり、4.からやり直しとなります。
6.は第二難関です。
これは冒頭の写真のウレタン整形前
この黄色いパーツは、現在は手作りです。
この行程に失敗すると中心線がずれます。
実は製品の中に、中心線がずれている機種が多数存在します。
(どの機種かは答えませんので質問しないでください)
冒頭の写真を再度ご覧ください。
中心がきっちり出ているのが解りますか?
5.でのロング加工は第三難関です。
アルミ芯材を一本一本手作りします。
この部材は今後入手困難につき、別の手法を開発中です。
アルミ心材をフレームに寸分違わず装着できるよう調整します。
その際、仕上りの重量と静的バランスを想定しながら、鉛を量と位置に細心の注意を払って組み入れます。
こんなに大変な作業です。
しかしこれだけで食べていける代金を頂戴しておりません。
よって、他の仕事の合間をぬってやります。
だからお時間はください。
このウレタン再成型は、当店のサービス提供比率では超極少です。
しかし、私はこれを通じて身につけたノウハウの活用範囲は絶大です。
ラケット販売の随所において提供しています。
それは、一言の場合もあります。
それは、簡素なチューンナップの場合もあります。
それは、ウレタン部分切削を伴うチューンナップの場合もあります。
買いっぱなしの方に、もっとチューンナップに関心を持ってもらいたいです。
市販の重さとバランスを、大いに疑ってください!!
すんごく変わりますよ!